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sota de copas

「ラバウル戦記」と「悪魔祓い」

茂が話す戦場でのエピソードを、終戦記念日直後に持ってくる様に上手く調節されているのが凄いなあと思う。

相変わらず「ゲゲゲの女房」な話ばかり続きますが。

私は水木しげるのラバウル戦記 (ちくま文庫)が好きなのは、当時のスケッチの生々しさと、
水木先生が敬愛して止まない「土人」の皆さん達の様子がイキイキしているから。

戦場での状況と戦友、上官達を描いたものが前半、
文字通り「土の人」として知り合った彼らのスケッチが後半にあるという構成は解りやすい。

さらりとだけど、沖縄や朝鮮半島から連れて来られた慰安婦達の悲惨な状況まで書かれていたり。
聖にも邪にも染まりきれない人間の「正義」「大義名分」と呼ばれる何かの、
人への破壊力がそこここに。


個人的に一番好きなのは、「土人」の彼らの笑顔や眼差しのを表現しているくだり。
「荘厳」という表現は最高の賛辞だと。

しかしながら、たとえ楽園の如き南の島でも実際には諍いも憎しみもあるのが常で。
その辺りも女酋長のイカリアスやトペトロが実は上手く立ち回って周囲を説得などして、
水木先生を守ってくれていた、という。

戦場の中でもビンタばかりくれる上官ばかりでなく、水木先生を好いてくれた戦友もあり。

人は戦場でも楽園でも別に変わりなく生きているなあと思う。

南洋での土人達との暮しぶりの素晴らしさの奥には、小さな島の中での濃密な駆け引きが隠されている。
限りある土地の中で暮らしていれば、その中でのストレスや不満とて逃げ端や解消策が無ければ辛い。
南洋の島での踊りや音楽は、そんな要素を昇華させる智恵の結晶とも言える。
それは以前書いたエントリーを思い出してしまった。

スリランカの悪魔祓い (講談社文庫)は一度絶版になったのが、
再編集されて復活したのを文庫の新刊の棚にあるのを見かけて嬉しくなった。
文庫も品切れ絶版が多いアイテムだけど、こういう名作はずっと残って欲しい。


有り余る程の自然の恩恵に囲まれていても恨みつらみや不満要素を持つのが人間で、
戦場などの非常事態の中ですら、優しさを表すのもまた人間ということで。
この間を埋めて行こうとする為の策の一つが、シャーマニズムかもしれない。

人の本性はそれぞれとはいえ、神聖も邪悪も未だ表裏一体に生きているという人間というのは凄く不思議。

肩に手を置いて微笑みを投げかける土人の眼の荘厳さがその不思議の光をたたえている。

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